「俳句に詠まれた猫たち」
猫の妻へついの崩れより通いけり・・・松尾芭蕉 (1644~1694)
はりぬきの猫もしる也今朝の秋・・・・〃
麦めしにやつるる恋か猫の妻・・・・・〃
猫の恋やむとき閨の朧月・・・・・・・〃
猫逃げて梅ゆすりけり朧月・・・・・・池西言水 (1650~1772)
懐旧や雨夜ふけ行猫の恋・・・・・・・千那   (1651~1723)
うき友にかまれてねこの空ながめ・・・去来   (1651~1704)
いずれもの猫なで声に年の暮れ・・・・嵐雪 (1654~1707)
竹の子に身をする猫のたはれ哉・・・・許六   (1656~1715)
くはらくはらと猫のあがるやむめの花・〃
田作りの口で鳴きけり猫の恋・・・・・〃
うらやましおもい切時猫の恋・・・・・越人   (1656~?)
猫の子に嗅がれているや蝸牛・・・・・椎本才麿 (1656~1738)
ねこの子のくんずほぐれつ胡蝶哉・・・其角   (1661~1707)
蝶を噛んで子猫を舐る心哉・・・・・・〃
京町のねこ通いけり揚屋町・・・・・・〃
あら猫のかけ出す軒や冬の月・・・・・丈草   (1662~1704)
木枯や更け行く夜半の猫のみみ・・・・北枝   (?~1718)
恥入ってひらたくなるやどろぼ猫・・・小林一茶 (1763~1824)
火の上を上手にとぶはうかれ猫・・・・〃
庵の猫玉の盃こそなきぞ・・・・・・・〃
なの花も猫の通いじ吹きとじよ・・・・〃
陽炎にくいくい猫の鼾かな・・・・・・〃
蒲公英の天窓はりつつ猫の恋・・・・・〃
綿くりやひよろりと猫の影法師・・・・〃
陽炎や猫にもたかる歩行神・・・・・・〃
嗅いで見てよしにする也猫の恋・・・・〃
紅梅にほしておく也洗ひ猫・・・・・・〃
鼻先に飯粒つけて猫の恋・・・・・・・〃
猫の子が蚤すりつける榎かな・・・・・〃
猫の子がちょいと押へるおち葉哉・・・〃
うかれ猫奇妙に焦れて参りけり・・・・〃
うかれきて鶏追いまくる男猫哉・・・・〃
寝て起きて大欠伸して猫の恋・・・・・〃
大猫の尻尾でじゃらす小てう哉・・・・〃
猫の子や秤にかかりつつざれる・・・・〃
梅咲やせうじに猫の影法師・・・・・・〃
猫の子のくるくる舞やちる木のは・・・〃
鳴猫に赤ン目をして手まり哉・・・・・〃
猫の子のほどく手つきや笹粽・・・・・〃
猫の飯相伴するや雀の子・・・・・・・〃
蝶々を尻尾でなぶる子猫哉・・・・・・〃
内のチヨが隣のタマを待つ夜かな・・・正岡子規 (1867~1902)
ちらちらと陽炎立ちぬ猫の塚・・・・・夏目漱石 (1867~1916)
水をのむ猫の小舌や秋あつし・・・・・徳田秋声 (1871~1943)
叱られて目をつぶる猫春隣・・・・・・久保田万太郎(1889~1963)
いなずまの野より帰りし猫を抱く・・・橋本多佳子(1899~1963)
うららかや猫にものいふ妻のこゑ・・・日野草城 (1901~1956)
うすべりに寒夜の猫の貌みがく・・・・金尾梅の門
猫の眼に海の色ある小春かな・・・・・寺田寅彦
雑炊や猫に孤独というものなし・・・・西東三鬼
垣板に猫のもたれる春日かな・・・・・寺山修司 (1936~1983)
猫の眼に海の色ある小春かな・・・・・久保より江
猫下りて次第にくらくなる冬木・・・・佐藤鬼房
黒猫の眼が畑におる三日かな・・・・・村上鬼城
まづ出でし猫の鈴鳴るふくさ藁・・・・森澄夫
買初の小魚すこし猫のため・・・・・・松本たかし
椅子に猫丸く寝ている小豆粥・・・・・遠藤梧逸

<あつかましながら>
温もりの恋しくなりて猫や来よ・・・・一太(1944~ )
恋猫のあわれ小さき前歯かな・・・・・〃
魚臭き港の猫や夏日暮・・・・・・・・〃
猫の喧嘩どこぞの犬の小言鳴き・・・・〃
野良猫の相伴にきて夜長酒・・・・・・〃
木枯や猫のまま食う空炬燵・・・・・・〃
野良猫を入れて寒夜の一騒ぎ・・・・・〃
うめがかにのつと顔出す恋の猫・・・・〃
恋すてふ破れかぶれじゃ猫の耳・・・・〃
餌くれる婆のある家や春の猫・・・・・〃
夕凪や浜に出てくる島の猫・・・・・・〃
立待の足に擦り寄る野良のクロ・・・・〃
島猫が皆くしゃみする野分あと・・・・〃
くしゃみして振り向く猫の鼻っちる・・・
捨て猫に小判冷たき寒夜かな・・・・・〃
猫獲りを呼びて淋しき島の冬・・・・・〃
鍋洗うルンペンにやさし猫日和・・・・〃

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