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新年
鬼の子の這い出てまぶし初日かな
神託を猫あほらしと嗅いでいき
猫年ときめてめでたき我が家かな
元日や猫まんま食う呆け者
春
お日様にあんして合わす小さい手
常ならむ雲追いかけて彼岸まで
行きずりも餅振舞れたるどんど哉
海麗らふと老い忘る梅の花
泣けるほどに水仙いとしと思へけり
菜の花や廃屋に残るプロマイド
この道や浜に駆けだす子等むなし
大山をうち驚かしたる春の雷
山の辺に野仏起こす雪解かな
この島に生まれ小さき猫の春
コハコベの首すくめたる春の雪
老人と自覚せぬまま呆けたり
初鳴きをきいて遍路の旅支度
春嵐や峠に宿の他はなし
見納めと思へば花の美しき
春潮や禅問答の案もなく
いくたびか夢見し朝の苔の露
もう少し寝たきキャベツの籠り明け
海うらら爺にも清か水仙花
大槌てふ島春霞む露地の先
島猫の水仙の香をちょっと嗅ぎ
灯台守も居ぬに今年も水仙花
日溜まりに浜大根のはや咲いて
先ず咲いて少々いじけねじれたり
麓より春はいあがる二月かな
猫日和何故か詳しき余所の路地
啓蟄や体慣らしの梅見かな
猫日和穴掘ってうんこしてちょっと隠し
お彼岸やトボトボ歩く遍路みち
淡雪や爪に染みたる蕗の灰汁
夏
夕凪や喧嘩しいしい夫婦舟
どくだみの花や更地の元の主
花筏嫁なみだする深山かな
おやべてふ店もありけり鞆の路地
音もなく嶺越す雲の瀑布かな
くいなしといへど浮藻の糸とんぼ
吉里吉里と鳴いて海豚は仏の目
秋
釣り人の背にひそひそと荻の声
蹲えば小さき人の声やして
飲み干してまだ宵もくち温め酒
素黒実の昨日のごとき酢いさ哉
紅葉梅雨傘にみやげの一葉かな
オンコロコロ唱えて願うこともなき
寂しさに糸揺さぶれば蜘蛛のきて
殺したき奴一人とてなきも寂しけれ
雁渡迷うべくもなき心哉
句碑ありて雨に古刹の紅葉かな
居住まいを正して寺の紅葉かな
半殺しにすんべえと婆は鎌を研ぎ
拝まれてありがとうとも応えられず
冬
風呂吹に透けて見えたるいのち哉
すなめりの並んで泳ぐ島航路
目を閉じて鮭炊かれおり粕の鍋
荒壁に言葉少なき冬日かな
鳴る釜に影おののける片時雨
うらびれの野に茜射すみぞれ降る
なにも告げず自死したあいつの冬
小春日や青虫いそぐ石の上
片しぐれ籾焼くけむり初若菜
ののさまにあんしてみたき寒夜かな
寒行やうちわ太鼓の行方しらず
木枯らしや海に吹き出す二三葉
風と来て風と去りゆく時雨かな
末枯れのそれぞれに哀し別れかな
吉備殿の前で物売る宇羅哀し
百草丸あり陀羅尼助丸もありて初時雨
埋み火の熾きて囲炉裏のよみがえり
枯れしいて一葉に残すうらみどり
冬温し憂きこともなき屋根の上
霜かとぞ出て満月の高さかな
憂きことを忘れて猫の日向ぼこ
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